SoftBank And Others Invest in U.S. Fusion Startup Using Lasers For Power Generation – Japanese

ソフトバンクと伊藤忠商事が核融合発電の米新興企業、ブルー・レーザー・フュージョン(BLF)に出資した。独自のレーザーを用いて安定した発電を可能にし、2030年をめどに商用化を目指す。人工知能(AI)の普及でデータセンターの電力消費が急増するなか、脱炭素エネルギーの切り札として核融合への期待が高まっている。BLFは22年11月に創業した。ベンチャーキャピタル(VC)などを含め、創業1年あまりで3750万ドル
(約56億円)を調達している。事業が構想段階のスタートアップ企業では異例の規模だ。

伊藤忠とソフトバンクは日本の事業会社として初めての出資者となる。両社の出資額はそれぞれ数億円。BLFは青色発光ダイオード(LED)の開発で14年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏が最高経営責任者(CEO)を務める。24年2月に日本法人を設立し、国内企業や大阪大学など研究機関と協業を進める。米国や日本など各国が核融合を国家戦略として育成策に力を注いでおり、日米両国で研究開発する。伊藤忠は今後、技術革新を見込める核融合発電の先端技術の知見を獲得する。さらにBLFが開発するレーザー技術は医療や通信、素材加工などエネルギー分野以外にも応用できるとみており、伊藤忠グループとして様々な事業機会を探る。

核融合発電の新興企業BLFは、青色LEDでノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏がCEOを務める

AIの普及や通信の高度化でデータ処理に使う電力消費が膨大になる見通し。ソフトバンクは脱炭素エネルギーとして二酸化炭素(CO2)を出さない核融合発電に期待する。レーザーで核融合反応、中村氏「世界で例がない方式」

BLFは燃料に強力なレーザーを当てて核融合反応を起こす方式に取り組む。新開発する独自のレーザーで、エネルギーを連続して取り出せない核融合の課題に対処する。真空空間に向かい合って配置する鏡の間にレーザーを放ち、光を反射させてレーザーを増幅する。
宇宙のわずかな空間や時間のゆがみをとらえる重力波検出器の原理を応用したもので、BLFの中村氏は「世界で例がない方式だ。真空にすれば発熱しない利点がある」と強調する。

発電には少なくとも毎秒10回、燃料にレーザーを当てる必要があるとされる。現在は高出力のレーザーを連続して照射できず、商用発電に向けた課題となっている。BLFは24年中に阪大の施設で核融合反応を確かめる初期的な実験を始める計画だ。阪大に総額4億円程
度をかけて装置を導入する。核融合にはBLFが取り組むレーザー式のほか、磁気の力でプラズマを制御する「磁場閉じ込め」方式がある。燃料をセ氏1億度以上に加熱し、原子核に含む陽子や電子が自由に飛び回るプラズマ状態をつくる。

これまで磁場閉じ込め式が本命視されてきた。米ローレンス・リバモア国立研究所が22年と23年、レーザー核融合の実験で投入した分を上回るエネルギーを取り出すことに成功したのを受け、レーザー式にレーザー式の核融合に取り組む企業も増えている。実現すれば理論上、エネルギーを無尽蔵に取り出せる核融合の実現に向けた動きは世界で活発だ。米新興企業オープンAIのサム・アルトマンCEOが出資する米ヘリオン・エナジーはすでに28年から米マイクロソフトに電力を供給する契約を結んだ。
世界の核融合企業、累計調達額は62億ドル米核融合産業協会によると、23年7月時点で世界で43社が核融合に挑んでおり、累計の資金調達額は62億ドルに上る。1年前から14億ドル増えた。金利上昇でスタートアップ投資全体は低調だが、核融合ではBLFのような創業間もない企業にも資金が集まっている。日本でも核融合技術を開発する新興企業に投資が増えてきた。三菱商事や三井物産、関西電力グループなどが出資する京都フュージョニアリング(東京・千代田)が23年に105億円を調達。エクスフュージョン(大阪府吹田市)も18億円を調達した。

核融合は世界各国が実用化を競う。日本も23年4月に初めて国家戦略として「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」をまとめた。50年ごろの実用化をにらみ、企業の新規参入促進や新興企業の支援などによる産業育成を打ち出した。

海外では米国と英国が核融合の国家戦略を策定し、重要技術の獲得を進めている。米国はエネルギー省が中心となって企業に補助金を支給するほか、官民連携の研究を促している。
(シリコンバレー=山田遼太郎、大西智也)

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