Question Everything and Spark Innovation: Professor Shuji Nakamura Takes On Fusion Power Generation – Japanese
JAPAN : 写真提供 – Nikkei.com
Original source: Nikkei.com, Aug 24, 2024. Click here for the article link
日本が科学技術立国の旗を掲げて約30年。電機産業は中韓勢に大きく水をあけられ自動車産業にも停滞感が漂う。青色発光ダイオード(LED)の研究でノーベル物理学賞を受賞したカリフォルニア大サンタバーバラ校の中村修二教授は、研究者の起業こそが、日本再浮上の処方箋と説く。
研究職の傍ら、2008年にLED照明を手がける企業、13年に青色レーザーとレーザー照明を手掛ける企業を共同創業した。22年末には3社目の核融合発電スタートアップを米国で立ち上げた。同社は創業1年あまりで50億円超を調達した。
――日本では大学に所属する研究者の起業は多くないように思う。なぜ起業するのか。研究や教育に相乗効果があるのか。
「日本でイノベーションが生まれない環境の背景にあるのは、特に大学の研究室発のスタートアップが日本で出てこないことだ。米国の工学部の教授は基本的に起業を経験した人がほとんどで、1人の教授が5社ほど創業する。企業の技術顧問のようなこともする。私の3社は少ないほうだ。米国のスタートアップで働く人たちのインセンティブは大企業とは全く違い、成功しようと休暇中であっても必死に働く。同じテーマで競争すれば大企業に勝つに決まっている」「企業はビジネスに必要な最先端の研究開発に取り組んでいる。起業する際には資金調達などのノウハウや投資家へのアピール力も欠かせない。教授が起業や企業の顧問などで学び、その生きた知識を学生に教えるのが大学だと思う」「学術研究が中心の日本の大学教授は、本や論文の知識を学生に教えている。それは歴史を教えているに過ぎない。教授が大学の外に出たことも起業した経験もないので、学生も起業の知識を得られないし、その道があることにも気がつかない。学生が起業っていいなと思ったり、教授が優秀な学生を自らのスタートアップで雇ったりするような循環が必要だ。大学側もパナソニックやソニーといった日本企業の優秀な人材が定年退職したら、採用すれば良い」「中国はスタートアップがたくさん出てきて成長している。米国そっくりだ。米国の大学では中国人留学生が増えていて、彼らは最先端の研究を米国で学んで帰る。だか
ら非常に強い」
――2000年代にかつて所属していた日亜化学工業に青色LEDの特許を巡る訴訟を起こした。賛否両論があったものの、研究者にとって特許の価値が改めて注目される契機になった。
「特許の意義は自分の発明を守ることにある。そもそも日本の大学は論文を書くばかりで特許を申請しない。論文は学閥などの政治的な要素や審査委員の好みで当落が決まる傾向にある。特許の審査は中立で、アイデアが全てだ。私も含めて米国の大学では学生に論文ではなく特許の書類を書くように指導している」
――日本の大学が重視する論文も、注目論文数は20年間で世界4位から13位に下がった。この間、産業競争力も低下しているようにみえる。
「テレビも半導体もダメになり、最後のとりでの自動車産業もおかしくなりかかっている。何も新しいものが出てこない。私が幼いころから今も技術立国と日本は唱えているように思うが、その道は完全に消えたのではないか。最近は観光立国での成長を掲げているが、この先何年成長できるだろうか」「大学が今のままであれば学生は海外に行くしかない。もし日本で大企業に勤めるなら、大学のような学ぶ場所だと思って行くべきだ。大企業で5年間ほど勉強したらもう十分で、自信が付いたら自分で起業するなり、スタートアップに行くなりしてほしい」
核融合発電は理論上、1グラムの燃料から石油8トン分のエネルギーを生み出せる。世界の電源構成を大きく変える可能性を秘めるが、実用化には技術的な課題も多い。
――なぜ今、後発となる核融合発電に挑んでいるのか。
日本や米国、欧州連合(EU)や中国など多国間連合が約200億ユーロ(約3兆4000億円)を超える巨額投資で国際熱核融合実験炉(ITER)の建設を進めている。勝算はあるのか。「学生時代から核融合の研究には興味があった。実は大学院でも核融合分野に進もうかと試みたほどだ。その後長く青色LEDとレーザーの研究をしてきたが、改めてレーザーを物質に照射して核融合反応を起こすレーザー核融合の研究開発を進めている」「核融合発電ではITERで進められている磁場でプラズマを閉じ込める方式が本命視されている。(核融合反応を起こさせる)プラズマを長時間安定的に閉じ込めることが難しく、何十年間も開発を進めてきて、まだ実用化できていない」
「一方、レーザー核融合は米研究所が22年末にブレークスルーを起こした。投入するエネルギー量以上のエネルギー出力を得た。あとは実用化するだけだ。我々は画期的なアイデアを生み出し、すでに50件以上の特許を申請した。日本と米国は光レーザー関係の技術開発が進んでいる。我々も日米それぞれで共同研究相手があり、開発の加速を期待できる。核融合発電は資源のない日本にとっても、今後のエネルギー戦略で重要な技術だと思う」
――青色LEDの開発の際も、当時本命視されていた方式とは別の方式を採用し成功した。先行研究に頼らずに自力で考え抜くことが要諦だと説いた。
「今の核融合発電の開発状況は私が青色LEDの開発に成功したときと同じ構図だ。私が青色LEDの開発に着手したのは1980年代後半。技術の後追いには可能性がないと思い、ほとんど見向きもされなかった窒化ガリウムに狙いを定めた。新発想の方法で20年以上達成できなかった開発を5年でなし遂げた」「先行研究はあまり信じない。核融合発電がまさにそうだ。世界で多くの人が『磁場がいい』というが、研究成果を調べてみるとまだまだ難しいと思う。人が言っていることを信じるのではなく、自分でよく調べて理解して取り組まないと発明は成功しない。新規参入する場合、誰も研究開発していないところは当たる確率が高いと思う」「発明にはアイデアの新規性、独創性が重要だ。企業や大学は優秀な人材を集め、投資して、あとはあまり干渉しないことだ。複数人を集めてチームで研究開発を進める場合、往々にしてリーダーは規則を設け、会議を開き、目標を作って出資者などに報告をしなければならない。色々と制約がうまれる。発明者には自由に考え抜ける環境を作ってほしい
「保守的な考え方の人が多い日本ではまだ難しいが、米国では政府などがアイデアさえよければ予算をつけてくれる。ノーベル賞受賞者という実績や、年齢や企業の規模などで評価されることはない。研究を後押しする政策も、独創的なアイデアを生み出すのに重要だ」「日本は大企業がつぶれそうになったら、すぐに多額の補助金を投じて延命させる。半導体が良い例だ。私から見れば、傾いた大企業はつぶれる運命にある。イノベーションの循環が回らなかった結果、今は日本全体が沈没しかかっている。大企業を延命させてきた資金をやる気と技術を持ったスタートアップに回してはどうか。企業、ひいては産業の新陳代謝が進むはずだ」
なかむら・しゅうじ : 愛媛県出身。1979年徳島大大学院工学研究科修士課程修了、日亜化学工業入社。93年高輝度青色LEDの開発に成功。2000年米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授、14年にノーベル物理学賞受賞。22年核融合発電のブルー・レーザー・フュージョン共同創業。
研究者育成、官民で改革を(インタビュアーから): 1995年成立の科学技術基本法で日本は科学技術振興を掲げた。皮肉にもイノベーションのベースとなる研究者の数は主要国の中で相対的に伸びが低い。企業や大学の研究者総数の主要国のデータがそろう2021年時点で日本がおよそ20年前に比べ13%増の約69万人。米国は同60%増の約164万人、中国は同3倍の約241万人だ。

中村氏は「15年前と比べて状況はだいぶ変わってきた」としていたが、日本の大学発スタートアップの設立件数はなお米国の3分の1の水準にとどまる。産業の新陳代謝が起きず、日本経済の長期停滞につながっている一因とも言える。発明を生み出す研究者を育成する教育制度の改革だけでなく、発明の対価を一段と認める法整備、スタートアップ振興など官民をあげた取り組みが必要だ。安定志向がまん延する社会となれば、国力の衰退が加速しかねない。(京塚環、福井健人)
写真:宮口穣
映像:井上龍平 , 小川賢一
About Blue Laser Fusion, Inc.
Blue Laser Fusion Inc. (BLF) is a leading fusion energy company based in Santa Barbara, CA with offices in Silicon Valley and Tokyo, Japan. The company is commercializing a proprietary and novel laser fusion technology to achieve the world’s first carbon-free, on demand, renewable, clean energy generation and to accelerate a transition to an electrified world. BLF aims to commercialize a GW scale reactor to provide power to the grid to meet the acute and increasing demand for clean energy for data centers and to support the AI revolution, for semiconductor chip fabrication facilities and chemical and steel production plants, as well as for electric vehicles and homes. The company has a comprehensive IP portfolio with more than 100 patents and applications internationally. To learn more, please visit:

