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Shuji Nakamura’s Persistent Six Months That Create a Bold New Fusion Energy Concept – Japanese

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JAPAN – 写真:太田氏(左)が中村氏(右)にブルー・レーザー・フュージョンの立ち上げを熱心に働きかけた

Original source: Nikkei.com, December 28, 2024. Click here for the article link


日の丸核融合 中村修二氏の挑戦㊤

青色発光ダイオード(LED)の研究でノーベル物理学賞を受けた中村修二氏が核融合技術の実用化に執念を燃やしている。その拠点が自ら立ち上げたブルー・レーザー・フュージョン(BLF、米カリフォルニア州)だ。あるベンチャーキャピタル(VC)の投資家との出会いから、起業に踏み切った。2人で「根気よく考えた」半年間が新しい核融合方式を生み出すことにつながる。

「レーザー核融合、やりましょうよ」。2022年春ごろ、普段滞在する米国から一時帰国した中村氏は、東京都内の料亭で早稲田大学ベンチャーズの太田裕朗ジェネラル・パートナーにこう提案された。レーザー核融合の可能性や課題について太田氏は熱心に語った。

太田氏がロームに在籍していた際、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)との共同研究を機に中村氏と知り合った。その後、太田氏はロームを退職してUCSBの研究員となり、中村氏との距離が一気に縮まった。

中村氏は太田氏のとっぴな提案に「面白そうだね」と答えつつ「半分冗談だろうと思っていた」と振り返る。米国に戻るとまもなく太田氏から20〜30ページに及ぶスライドが送られてきた。「今のレーザー核融合にはこんな課題があります」。中村氏は太田氏の熱意に魅せられ、次第に起業を意識し始めた。

それから太田氏が日本から資料を送っては、中村氏が米国で頭をひねってアイデアを絞り出す日が続いた。中村氏は青色LED、ブルーレーザーの権威だが、ブルーレーザーで核融合を起こすのは難しい。適切な核融合の方式を考えなければならなかった。

レーザー核融合の課題は、1メガ(メガは100万)ジュール超の出力を維持しつつ、1秒間に10回以上も連射できるレーザーの開発だった。理論上はこの2つさえそろえば、核融合発電は実現できると考えられていた。

中村氏と太田氏はある日、真空中でレーザーが2枚のミラーの間を何度も往復すればレーザーが増幅することに気づいた。「誰も思いついていない、世界初のアイデアだ」。2人は興奮した。

しかし問題が起きた。関連する論文を読みあさっていたところ、レーザーをミラーの間で増幅させる「光学増強共振器(OEC)」は既に実用化していることを知る。物質の運動で時空がゆがむ「重力波」を検出するための装置に使われていたのだ。中村氏は「ショックを受けた」と吐露する。

OECは重力波検出器に使われていたものの、核融合レーザーへの応用事例はなかった。中村氏と太田氏にとって「不幸中の幸い」だった。

重力波検出器では、一定の出力を維持し続ける「連続波(CW)レーザー」を増幅する。一方で中村氏と太田氏が考えた方式では、高い出力を短い間隔で繰り返し照射する「パルスレーザー」を使う。中村氏は「これは誰も考えていない未知の分野だ。安心した」と話す。

折しもレーザー核融合に注目が集まり始めていた22年12月、核融合反応で得られたエネルギー量がレーザーのエネルギー量を超える「点火」に、米ローレンス・リバモア国立研究所の国立点火施設(NIF)が世界で初めて成功した。中村氏が「大ブレークスルー」と評価し、BLFの飯塚清太バイスプレジデントも「ノーベル賞級」と指摘する。

しかしNIFの偉業の裏には課題もあった。NIFのレーザー出力は十分なものの、照射頻度は1日に数回程度が限度だった。これでは定常的に核融合反応を起こして十分なエネルギーを生み出すことができない。一方、大阪大学が設置した最新レーザーは1秒間に100回と照射頻度が多いが、エネルギーの大きさは不十分だ。

BLFは世界初の核融合発電の実用化をめざす

BLFはこのトレードオフを解決できると見込む。レーザーを分岐させて増幅する「コヒーレントビーム結合(CBC)」によってCBCレーザーをつくり、それをOECのミラーの間でさらに増幅させる。中村氏は「何十年もかかると言われていた実用化の問題が、理論上はすぐに解けてしまう」と期待する。

BLFは「世界最大」ともされる重力波検出器を開発したカリフォルニア工科大学(カルテック)と共同研究契約を締結している。これは核融合でOECを活用するための「センターピン」(太田氏)ともいえるステップだった。

新しいアイデアだけに実証のハードルは高い。それでも中村氏は「カルテックの研究者に言わせれば『何も問題なくできる』とのことだ」と自信をのぞかせる。

なぜ中村氏と太田氏はOECという斬新なアイデアを着想できたのか。「ただ単にしつこく、考えに考えた。とにかく根気よく考えた」。こう中村氏は繰り返す。

中村氏は研究者でありながら、BLFというスタートアップの最高経営責任者(CEO)でもある。「うちは実用化しか頭にない」。だからこそ、これまでにない視点で斬新なアイデアをひねり出せた。

実は中村氏にとって核融合は一度諦めかけた研究分野だった。徳島大学の学部生時代、京都大学の修士課程に出願していた。核融合を学ぶためだ。「理論物理が好きで研究していると、みんな核融合が面白くなる」

しかし京大の大学院には合格できなかった。徳島大の修士課程に進み、結果的には後にノーベル賞をとるほどの研究者になった。かつて憧れた核融合で再びブレークスルーを起こそうとしている。

BLFの創業前、中村氏は太田氏にノーベル賞受賞者として後に点火を達成するNIFで講演したときの思い出話を聞かせていた。「彼らは波長を短くして、ブルーのレーザーを使っていた」。太田氏はすかさず「それやったら、ブルー・レーザー・フュージョンでいいんじゃないですか」と提案した。こうしてBLFという社名が決まった。

「太田さんに会わなかったら、レーザー核融合をやることはなかった」。中村氏の運命を決めた都内の料亭での会食から2年あまり。盟友となった太田氏を共同創業者に迎え、世界初となる核融合発電の実用化に向けて進み始めた。

(仲井成志)

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About Blue Laser Fusion, Inc.

Blue Laser Fusion Inc. (BLF) is a leading fusion energy company based in Santa Barbara, CA with offices in Silicon Valley and Tokyo, Japan. The company is commercializing a proprietary and novel laser fusion technology to achieve the world’s first carbon-free, on demand, renewable, clean energy generation and to accelerate a transition to an electrified world. BLF aims to commercialize a GW scale reactor to provide power to the grid to meet the acute and increasing demand for clean energy for data centers and to support the AI revolution, for semiconductor chip fabrication facilities and chemical and steel production plants, as well as for electric vehicles and homes. The company has a comprehensive IP portfolio with more than 100 patents and applications internationally. To learn more, please visit:

www.bluelaserfusion.com